年金制度改正法成立-まずは2点ご確認を-

 令和7年6月13日、年金制度改正法が成立しました。

 改正点は複数あるのですが、事業主の方が人事の配置や採用計画等の観点から知っておくべきだろうという2点をご紹介します。

1 短時間労働者の社会保険加入対象の拡大が始まります
  
 短時間労働者については、いずれ企業の規模要件が撤廃されるのではないかと、これまでも話題にされてきましたが、今後10年かけて規模要件が段階的に撤廃されることが決まりました。また、社会保険加入時の賃金要件の1つだった、いわゆる「106万円の壁」も3年以内に廃止されます。

 これまでは加入判断の4要件があって、労働者側からすると加入することが難しかったと思いますが、今後は週20時間以上働く短時間労働者は社会保険に加入するというイメージになります(但し、個人事業所は改正の取扱いが異なるため除きます)。

 御社の現在の社会保険加入の方は何人いらっしゃいますか。

 また、社会保険未加入のパートタイム等の非正規労働者は何人いらっしゃって、その方々は今後どのような働き方を望んでいるか把握されていますか。

 現在の自社の状況を早期に把握し、将来の人件費見通しを立て、人員配置や採用計画を考えておきましょう。

~厚生労働省作成_「年金制度改正法の概要」から抜粋~

 
 なお、新たに適用拡大により社会保険加入となった短時間労働者への支援として、事業主が労働者負担分の社会保険料を追加負担した場合(例えば、労働者1/4、事業主3/4で保険料を負担)に、事業主の追加負担分に対して国が支援する政策が検討されています。

2 在職老齢年金の支給停止基準額が62万円に引き上げられます

 引上げは2026年4月からです。

 元気で人生経験も豊富な高齢者が沢山いらっしゃいます。「年金を受給しながら働くのは損」のような理由での制約にとらわれずに、働きたいと思う人が働き続けられる社会に向かう改正です。今後、さらに高齢者の方の求職が増えるのではないでしょうか。

 事業主も、貴重な人材の一員として高齢者を戦力化する機会が増えます。求人に際しても、フルタイム前提に限らず、高齢者が労働参加し易い、柔軟な労働時間を設定してみてはいかがでしょうか。


 また、エイジフレンドリー補助金(令和7年度予算)という高年齢労働者の労働災害防止のための設備改善や専門家の指導を受ける経費補助の補助金もありますので、自社で活用できるかご確認してみてください。